福岡高等裁判所 昭和28年(ラ)71号 決定
本件抗告の要旨は、訴訟における当事者中に補助参加人が包含されることは、民事訴訟法中「第一編総則」「第二章当事者」「第三節訴訟参加」として規定される第六十四条、第六十八条、第六十九条の趣旨、序列、同法中「証人訊問」、「当事者訊問」に関する諸規定の趣旨、殊に法が証拠方法の補充的なものとして第三百三十六条以下の諸規定を設けた立法趣旨、大正十一年四月法律第五十四号による改正当時の同法第二百九十七条第一項第一号乃至第三号において、証人と原告若しくは被告との関係を以て証言拒絶事由としたこと等に徴して、一見明白である。従つて補助参加人はもともと証人資格を有せず、その証拠調としては、当然当事者訊問の手続によらなければならないのであつて、このような平明な事項について裁判官たる者が理解を欠いているとは、到底考えられないところであり、この理解あるべき筈の裁判官が抗告人等のこの点に関する異議申立を却下したということは、何等かの不純な心事に出でたものとしか解せられない。仮に裁判官が前記のような理解を欠いておるとすれば、それは法律知識が不足であるという外なく、この程度の法律知識しか備えない裁判官が証拠調を担当すること自体が裁判の公正を害するものというべきである。よつて原決定が抗告人等の本件忌遅の申立を却下したのは失当たるを免れないから、本件抗告に及ぶ、というのである。
記録によれば、島原簡易裁判所泉裁判官が福岡高等裁判所第一民事部の嘱託に基き、同高等裁判所昭和二十六年(ナ)第二四号裁決取消並びに選挙無効請求事件の被告補助参加人たる山本富治外二名を証人として訊問するに際し、同事件における原告補助参加人たる抗告人等より、補助参加人は当事者本人として訊問せらるべきものとして、異議の申立があつたが、同裁判官は、右申立を却下して、出頭した証人全員につき、証拠調をなしたところ、抗告人等は泉裁判官の右の措置は、裁判の公正を妨ぐべき事情ある場合に該当するとして、本件忌避の申立をなすに至つた事実が明らかである。しかし、補助参加人をその訴訟における証拠方法として訊問するには、証人訊問の手続によるべきであり、この場合当事者訊問の規定の適用はないと解すべきであるから、本件証拠調に際し、泉裁判官が抗告人等の前記異議申立を却下して、証人訊問の手続によつて証拠調を施行することとしたのは、まことに適法且つ正当というべく、同裁判官の右の措置自体を捉えて、裁判の公正を妨ぐべき事情ある場合に該当するとなし得ないことは当然である。抗告人等の所論は、独自の見解に立つて、泉裁判官の措置を非難するもので、もとより採用の限りでない。
よつて抗告人等の本件忌避の申立を却下した原決定は相当で、本件抗告は理由がないから、主文のとおり決定する。
(裁判官 野田三夫 川井立夫 天野清治)